2017 9月
国立西洋美術館「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」展が開幕しました。広報物はラモン・カザス《「アニス・デル・モノ」のポスター》の魅力的な人物をコピー&ペーストすることで人の移動やイメージの複製、伝播を表現してみました。フォトスポットを作るとしたら何かできないでしょうか、というお問い合わせからできたものが高さ約1メートルのお猿さんのアクリルスタンド。展覧会場に入る前にお猿さんとの撮影を楽しんでもらえるといいな。画像は内覧会用にデザインした看板類とお猿さんのアクリルスタンドなど。
展覧会はモノクロの版画から始まってイメージを正確により細密にという進化を経てカラー印刷に至る歴史が俯瞰できるのがとても面白いです。マネの『マルガリータ王女(ベラスケスに基づく)』が以前読んだマネについての本にあった通りでちょっと得をした気になりました。展覧会は9月3日(日)までです。
芸術新聞社『墨』272号発売中です。表紙と今号から総扉もデザインしています。総扉は漢詩の一部分を切り取り、七・七調のひらがな訳をあてて紹介する「からのうた」という新連載です。ひらがな訳・文は横山悠太さん。漢詩とひらがな部分は凸版印刷した清刷りの中からかすれのあるものを選びデータ化しました。背景には中国の蝋箋という日本の料紙のもとになった絹本をひいています。文字原稿と合わせて漢詩は楷書、ひらがなは行書という完成形に近いラフと、蝋箋のアイデアは担当の方からいただいて形にしました。中央の漢詩に注目して欲しかったので凸版印刷の清刷りを元にすることにしました。清刷りの印刷は弘陽の三木さん。
表紙の墨のロゴは特色金。マットPPの下で鈍く輝きます。
2020年12月23日
ギンザ・グラフィック・ギャラリー第381回企画展 石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか
石岡さんが東京でポスターの制作をされていた時、勤めていた事務所から石岡さんのマンションまで僕の車で送り届けたことが数度。黒のイッセイの衣装にタテガミのような髪をかきあげながら「三田から歩いてきちゃったわよ!」と事務所に笑いながら大股で入ってきて、いきなり床に並べた紙焼きをむんずと掴んでその紙焼きにバリッと親指で大きな穴を開けたあの瞬間、デザイナーみんな凍りついてただオロオロしていたことを鮮明に覚えている。ちょっと鼻にかかったそのお声をgggの地下で聞いた。膝から崩れ落ちそうになった。
大学4年の時、表参道にあった東高現代美術館でアンゼルム・キーファーの《室内》を見た。確か一番奥の展示室。突き当たりにコールタールと麦藁で塗りたくられた巨大な作品があった。この目で作品と対峙した時、言葉にできない何かが伝わってきた感じがした。その時感じた衝撃の熱をいまだに持ち続けている。くすぶり続けているその熱でこの仕事を続けている。自分は直接作品を見ることで影響を受けた。だから展示中止になったさまざまな展覧会を本当に残念に思う。
セタビ・ポッドキャスティングにて「ユートピアを求めて」展の魅力を取材されたものが本日アップされました。世田谷美術館のPodcastingのページで音声が聴けます。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/blog/2014/10/podcasting_vol38.html
会場の作品を中心に、ロシア・アバンギャルドのポスターデザインの特徴、プロパガンダのデザインの特徴、自分の感じる魅力、お気に入りの一枚、今回の広報物について、など語っております。図録を制作したご縁で講義もしましたが、まさかの音声取材です。モゴモゴ話している部分はご勘弁くださいませ。写真はお気に入りのプルサコーフのロゴをデザインしたTシャツを着てご満悦の図。このシャツは展覧会で購入したもので、背面のおしりの部分に入った文字が良いのです。
ポスターチラシから看板までデザインさせていただいた世田谷美術館の「ユートピアを求めて」が開催中。もう中盤、11月24日まで。
10月11日 関連企画の「世田谷デザイン学校(特設)第1講
「ロシア・アヴァンギャルドのデザイン言語」の講師をしてきました。
このポスター群の魅力を言語化したくて、デザイン史の復習から始めて幾人かに取材。自分の尺度を超えるミステリアスな作品だったと再認識。ポスターのデザインの分解をしているうちに本にまとめたくなって、長年の夢でもあった同人誌を制作。講義の教材として配りました。ジャポニスムあたりからの時代との関係、作品のデザイン要素の関係、現代(日本)のデザインとの関係をテーマに、図録とセットで展覧会を追体験できるよう構成してみたもの。
学芸員の方に勧められるままセタビポッドキャストという取材も受け、始めての経験ばかりでしたが作品をより深く体験することができました。ひたすら感謝。改めて思うのはこのポスター群が個人的なコレクションだという事。松本瑠樹さんの情熱がここに残っています。
さて講義の最後に質問を受けてやり取りする時間がありましたが、2点答えきれていなかったように思うのでここにメモしておきます。
1)第2次大戦後のソ連のグラフ誌と日本のグラフ誌の関係について。
不勉強で全くどうしようもなかったのですが、デザイン学校第4講の鳥羽さんなら詳しくご存知なのではという情報をお伝えできなかったこと。次にバトンを渡すこともできたのにという反省。
2)宣伝と(商品の)売り上げの関係について。
自分の経験の中から展覧会のポスターと入場者数の話をしたものの、あの場ではせっかくですからプロパガンダのポスターと人々の関係に話を展開するべきでした。善し悪しを超えて会場を巻き込んだ対話になっていたかもしれません。
松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて 展覧会開催中。
10月5日
台風18号大接近のなか、オープニング・レセプション。
図録の制作にたずさわった方々と久しぶりの再会。とってもうれしい。
展覧会場は神奈川県立近代美術館 葉山館の立方体な会場と違って、
斜めに切り取った部屋があったり実験的。
ポスター三段積みは狭いスペースでより圧倒的に。
作品の猥雑さはこちらの方がより効果的に見えるかも。
その後、作品と展覧会についての取材。
まさかロシア・アバンギャルドのデザインにについて話すことになるとは。
10月7日
引き続きデザイン学校、第1講の為の教材を準備中。
エディションナンバーをタイプ、タイプ。
9月30日から世田谷美術館で開催される展覧会。
松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて
ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム
クラフト紙に2色印刷のポスターが出来ました。チラシは配色を変えています。
提案したアイデアにのってもらえるとより面白く。
さて、会期中10月11日(土)午後4時から作品(ポスター)群についての講義をすることになりました。
私、クリ・ラボなので研究発表のようなことになろうかと。
展覧会のついでにお越しください。美術館のサイトに詳細があります。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/next.html
「松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて展」関連企画
世田谷デザイン学校(特設)第1講「ロシア・アヴァンギャルドのデザイン言語」
7月19日から平塚市美術館で開催中の
「ブラティスラヴァ世界絵本原画展-絵本をめぐる世界の旅-」
の広報物と図録をデザインしました。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展はながーい名前なので略してBIB展。
平塚では8月30日までですが来年8月30日まで1年かけて5会場を巡回します。
展覧会オープニングでのきくちちきさんと広松さんの記念対談は良い時間でした。
早い段階で決まったテーマカラーの黄色。
それなら図録も黄色の紙と白い紙には黄色の縁取りで
「あの黄色い本」って覚えてもらえるようにしました。
カバーの用紙はベィビーフェイスで良い発色。
世界の旅のガイドブックなら世界地図も描かなくちゃという事で。
4月26日から群馬県立館林美術館で開催される
「陽光の大地」展の広報物のデザインをしています。
ブラジルのあつい熱を感じられるようにしたいということで、
国旗の星の部分を太陽に見立てて文字の背景に。
配色は作品に呼応してポスターそれ自体が発熱しているようにしてみました。
「ブラジルの日系人画家たちと大岩オスカール」ということで、
関連したイベントが盛りだくさんのようです。
作品詳細。大岩オスカール WWW.Com 兵庫県立美術館蔵
4月22日より東京国立博物館で開催される、
特別展「キトラ古墳壁画」の広報物のデザインをしています。
B1ポスターからA4チラシまで朱雀・白虎・玄武を原寸で配置。
作品の大きさに興味があったものをそのまま形にしました。
作品が東京にやってきたと新聞にあります、いよいよです。
http://kitora2014.jp/
作品の詳細。キトラ古墳壁画:
「四神」より「朱雀」/「白虎」/「玄武」 写真提供:奈良文化財研究所
日本印刷産業連合会さん主催のカタログ&ポスター展2014という催しで
和様の書のポスターが奨励賞に選ばれたとのこと。
このポスターの用紙にはいつもとちょっと違うジェントルフェイスを使って、
肌が柔らかくギラギラしない和紙の雰囲気に近づけました。
タイトル部分には活字からデータにおこしたロゴを
奉書紙に活版印刷したものを印刷に入稿。
4つの第一級の作品に封をするタイトルにしました。写真はその原版。
短い時間の中で手間のかかる作業を見事に仕上げていただいた印刷会社、
アイデアをかっていただき後押ししてくださった担当者の方々に感謝しています。
紙舗直さんで和紙の話を聞き、活版印刷までお願いできたことがうれしかった。
神奈川県立近代美術館 葉山で「松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて
ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム」
展が始まりました。
ロシアのポスター展です。 アヴァンギャルドです。大胆です。
ところせましと映画ポスターを並べた展示室。
場所によって縦2段、3段になっています。
当時もきっとこんな感じでポスターが貼られていたと思います。
そしてそれぞれ過剰に自己主張、叫んでいます。ぐっときます。
昨日のオープニング、台風通過中の葉山まで行って良かった。
夢中になって作品を見て解説を聞いているうちに夕方に。
帰りのバスから見た海が少し落ち着いて、
雲間から夕日が見えたのがちょっと旅情。
図録のデザインをしました。
図録の表紙はステンベルク兄弟の〈6人の娘が隠れ家を探す〉、
計19人に増殖しました。制作印象社
東洋美術学校で講師をされている国立科学博物館の方の紹介で
講義に行ってきました。博物館教育論の枠の中で、
美術展の広告デザインの現場のはなしを聞かせてくださいというもの、
これで3年目。
開催中の展覧会の仕事の依頼から定着まで自分なりの進め方を中心に、
過去のいたい経験をはさみつつ、
仕上がった印刷物を手に取って見ていただく90分にしました。
講義で配る手書きの資料に落書きしながら話の順番を考えるのが楽しくて一晩。
で、講義で話しているうちにだんだん頭から湯気がでてきて、
時間配分がぐだぐだになる相変わらずな展開。
途中で質問があったのは、はずみがついてうれしかったし、
熱心に聞いてくれた事がわかるアンケートを読んで、正直ほっとしました。
10月5日から横浜美術館で開催される「横山大観展—良き師、良き友」の
広報物のデザインをしています。
明治から昭和初期の横山大観を中心に周囲の人物の作品を俯瞰して見ようという展覧会。
この時代の雰囲気は横浜の港のレトロな感じとも良い相性。
更に現代の作家の山口晃さんに主な登場人物6人の肖像画を描いていただいています。
いろいろなつながりで作家も展覧会もできているという。
展覧会のHPのトップ下では旅行中の横山大観が小さく動いています。
http://www.taikan2013.jp/
以下作品の詳細。
《夜桜》横山大観 1929(昭和4)年 大倉集古館蔵
《秋色》横山大観 1917(大正6)年
iPod nano(第1世代)交換プログラムで交換機が届いた。
修理されて戻ると思っていたのだけれど第6世代のが届いた。
バッテリーの加熱事故対策ということで知らせが届いて、
交換手続きをして1ヶ月弱で届く。
箱を開けると随分小さな金属板が入っていたので、
交換したパーツかしら?と思ったのだけど第6世代なのでした。
最初アップルすげー、なんて太っ腹!と思ったんだ。
これが関係性のデザインだよな、
企業と顧客の関係をデザインしているような気がして、
どんな関係が良いか考えるのがデザインだ!
などと悦にいっていたのだけど、だんだんせつない気持ちに変わり。
使い込んで傷だらけだったのに、今じゃメモリーも少なくて、
そんなに愛着を持っていたわけでないのに、
自分の中のほんのちいさなかけらを失った気分。基本古い考えなのよね。
ベニヤパネルにケント紙を水張りして表紙の背景を作る作業。
ニッカーのポスカラが眠っていたので使うつもりが、
10年以上放っておいたものはさすがにカチカチにひからびていたので、
絵の具を買いに行ったらきれいな色があるある。浅葱色から瑠璃色。
ラベルから想像する色があまりにきれいでニヤニヤしてしまい、
宝石に目移りしてしまう感覚はこんなかな。
日中は雑事に追われ(と言い訳をしながらずるずると気持ちを引っぱって)
深夜に気合いを込めて刷毛を握るのはずっと変わらない感じ。
凡庸なデザインに物理的な厚みと手作業の時間を加えてみる。
欲しい質感とどうしてもやりたかった事が重なった結果。
早く印刷してお届けしたいもの。
7月東京国立博物館で開催の「和様の書」展のポスターができました。
平面媒体をデザインしています。
和様の書とは日本風の美意識をもって書かれたもの。なのだそうです。
なんといっても仮名と用紙の美しさでしょうか。
ちなみに仮名文字という表記は間違いで「名」に文字の意味があり、
漢字文字と言わないのと同じとの事。
仮名の成り立ちなんてのも、例えば「波」から「は」に移る様を見ると本当に面白いのです。東博のブログでも一部見ることができます。
以下このポスターの作品の詳細。タイトルの「の」は秀吉の書いたものでございます。
右上:国宝 古今和歌集序(巻子本)〈部分〉藤原定実筆 大倉集古館蔵/右下:国宝 白氏詩巻〈部分〉藤原行成筆 東京国立博物館蔵/左上:四季草花下絵和歌巻〈部分〉本阿弥光悦筆 個人蔵/左下:国宝 古今和歌集(元永本)〈部分〉藤原定実筆 東京国立博物館蔵/中央:国宝 舟橋蒔絵硯箱 本阿弥光悦作 東京国立博物館蔵/展覧会タイトル「の」:重要文化財 仮名消息〈部分〉豊臣秀吉筆 京都・高台寺蔵
1月31日青山スパイラルで開催中の美大の卒業制作展に行く。
知人が出品していると聞き、これは見に行かないとということで。
ガラスの作品が大きくて重そうなのに軽そう。
硬そうなのに和菓子のように柔らかそう。
食べられないけどなんだか甘そう。
まるでドライアイスの質感だけどちょっと暖かそう。
本質をちょっとずらしてるのが面白い。
これが表現だな。
小学生の頃宿題だかなにかで、それぞれの家族史を作るというものがあった。
祖母に明治の頃からの歴史を聞いてみた。
家は兼業農家だったので農具の移り変わりみたいな事をテーマにしていたと思う。
太平洋戦争の頃の話。
祖父が病気で招集されなかった事を聞いた。
当時戦争映画が大好きだったぼくは祖父の事をちょっと情けないなと思ったんだ。
記憶になくて何も知らない人の事を情けないと思ったんだ。
映画だとかの影響で勇ましく戦争に行く事が正義だと思っていたから。
祖父は事情があり父がまだ幼い頃家を出ていた。
やりたいことがあると出て行ったそう。
ぼくは何度か父母弟と祖父の住む町に行った。
一度だけその人に会うという事で妙な緊張をした事を覚えている。
「永遠の0(ゼロ)」を読んだ。
あらそいごとの大嫌いなRがなぜか購入してしまったものの、
途中でつらくなったらしい。譲り受けて一気に読んだ。
松本零士の漫画が好きでそれなりに兵器の知識があったから、
最初は零戦や艦攻の文字があるだけで心躍るものがあったのだけど。
零戦乗りの話と思ったら当時のそして今につながる日本人の話。
戦場に行った人、行かなかった人。
戦争に行かなかったぼくの祖父は、当時その事でどれほど苦しかったか。
どれほど非難されたか。想像でしかないのだけど。
雰囲気に流されない判断をするという勇気を想像する、考える。
調べてみたら映画になるようだけど、エピローグまで描ききってくれるかしら。
下はモンセンから選んで加工したゼロ。
そぎおとすのではなくいろいろな思いを詰め込んでロゴができる。
美術展の場合、作家または作品との関係を考えてみる。
どこに使われてもどんな大きさでも機能するロゴにしたい。
森亮太展でのコンサートチラシを製作中。
春のコンサートなので展覧会のロゴもカラフルに。
今回ロゴ以外に図録からチラシまで表面にM、
裏面にRの文字を大きく入れています。
会場の看板などをデザインした方が
ちゃんと意図を汲んで反映させていてうれしい。
コンサートは3月3日、行こうかな。
明日21日から東京国立博物館で「書聖 王羲之展」が始まります。
今日はそのオープニング。拓本のぐっとしまった墨色にしびれる。
書聖と呼ばれる人の作品なのですが、
案外日常のほんのちょっとした事の手紙だったりするのが面白いのです。
疲れています、悲しみにくれています、憔悴しています、
そんな手紙が1600年を超えてガラスケースの中に陳列されている。
ただし真筆は存在しないので模写が並ぶ。
コピーのコピー、さらにコピーしてもなんとかしてこの書を残したいという執念だな。
図録は別の方がデザインされているのだけれど、
拓本の墨の色をそれぞれ微妙に変えている。
実際作品により全部違っているもの。これは良く出来ている。
僕はポスターなど平面媒体をデザインしました。
展覧会は3月3日まで開催しています。
広報物をデザインさせていただいた「森亮太展」が始まりました。
12月22日から4月7日まで群馬県立館林美術館にて。
ちょっと大きいサイズの図録ができました。
過去に製作されたしっかりした作品集も同時に販売されるという事で、
掲載作品を減らし16ページで新聞のように薄くしました。
展覧会の副題は「石の鼓動」。
手作業で極限まで滑らかに、繊細に磨かれた石の表面を見ると、
たしかにその作品のなかで魂が生きている気がします。
作家が亡くなって20年、なにかのご縁でカメラマンと僕が
彼の作品に対峙した結果がこの図録にあります。
自然光がきれいに入る美術館の会議室での静かな撮影。
単なる作品の複写ではなくて、魂を平面に映す作業だったのだな。
な~んて作業中そんなに引いた目で見る余裕はなかったけどね。
展覧会が始まるとデザインするものがなくなってしまうのだけれど、
会場で開かれる記念音楽会のチラシなど作業が続いてちょっとうれしい。
この仕事の場を与えていただいた美術館の方に感謝をしています。
印刷管理のこと。以前、永井裕明さんの元で働いていた時は、
100%刷り出し立ち会いに行っていた。
製品の管理を最後まで責任を持つ、ということを厳しくやっていたんだ。
永井さんはロケ、僕は印刷所で立ち会いという日のこと。
ロケの現場まで校正紙を届けて確認していただいた永井さんから電話で一言目、
「これ紙の目が違うよ」と指摘された時はきつかった。
色とか文字とか修正とか飛び超えて「紙の目?んんっ…え~っ!?」って。
早朝からロケの永井さんと深夜にバイクを飛ばして印刷所に向かった僕、
おそらく二人ともろくに寝ていなかったと思うのだけれど。
現場の人たちも驚いて確認したところ、
印刷機のボタンの押し間違え的なミスだったとのこと。
永井さん、おそるべし。
館林美術館の図録など立ち会っています。いよいよ開催。
森亮太展の印刷物は「ポール・アウターブリッジ」の写真作品のようにしたい。
と依頼され、その作品集を学習するところから本格的に始まった作業。
技法としては「CARBRO-COLOR PRINTS」というそうだけれど、
何の事やらさっぱりわからず。
どうしたものかと東京都写真美術館の専門調査員の方に問い合わせ。
要領を得ない質問に根気づよく丁寧に解説していただいき、
ちょっとは理解したつもりで印刷の計画を立てる。
カラー写真は墨版を使わずに3色で表現、モノクロ写真は墨と補色の2色という事に。
今回の印刷会社に相談したところFMスクリーンでやってみませんか。
ということでAMスクリーンとFMスクリーンの2種類を校正で確認。
網点の違いで結構インクの色が違って見えるほど彩度が上がる。
目指したちょっと不思議な色に仕上がっていると思う。
『MdN』2012年12月号(vol.224)特集:理屈でわかるレイアウト術
高橋由一展の先行チラシが取り上げられました。
東洋美術学校で講師をされている国立科学博物館の方から紹介されて、
90分の講義に行ってきました。
博物館教育論の枠の中で、
美術展の広告デザインの作業工程についての現場のはなしを
聞かせてくださいというもの。
へっぽこデザイナーに見られないよう見栄をはろうと思ったものの、
やってきたもの以上はなく、
恥をかくつもりで仕事(デザイン)に向かう気持ちから話してきました。
展覧会のチラシなど印刷物の現物を陳列して、
手にとって見ていただきながら生徒と話ができたのは良かった。
講師とはいえ結局自分の勉強になっている。
みなさんに配る手書きの資料を作ったりしているうちに朝になり、
入稿だなんだとばたばたしているうちに授業に突入。
授業の終わった帰りの電車で電池が切れて久しぶりの立ち寝。
新しい気持ちで始めます。
2012年 8月1日 栗原幸治